2025年4月20日2025年4月20日に投稿 投稿者 元)新人監督 — コメントを残す日本発、中性原子型量子コンピューターの挑戦【「Yaqumo」が目指す産業応用と拡張性】 2025年、分子科学研究所と京都大学がタッグを組み、日本初の中性原子方式量子コンピューター企業「Yaqumo(ヤクモ)」が誕生しました。量子ビットの拡張性と計算精度を両立する中性原子方式は、これまで主流だった超伝導方式とは異なる新たな可能性を秘めています。イッテイルビウムとルビジウム、それぞれの特性を活かした実機開発が進むなか、Yaqumoは2027年のクラウド提供と量産体制の構築を目指しています。産業界をも巻き込む次世代計算基盤の最新動向を追います。【1】国産初の中性原子量子コンピューター企業「Yaqumo」誕生2025年4月、国の研究機関である分子科学研究所は、新型量子コンピューターの実用化を目指し、東京都千代田区に拠点を置く新会社「Yaqumo(ヤクモ)」を設立しました。設立には京都大学との共同研究体制が背景にあり、日本初となる中性原子方式を主軸に置く企業として注目されています。この新型量子コンピューターは、従来のコンピューターが使用するビット(0か1)に代わり、「量子ビット(qubit)」を用いることで、並列的で膨大な計算能力を実現します。分子研の大森賢治教授と京大の高橋義郎教授が長年にわたり取り組んできた技術が基盤となっており、2027年には企業や研究機関向けにクラウド経由で利用可能な量子コンピューターの提供を目指しています。このような国家レベルの取り組みは、2023年に理化学研究所が超伝導方式の量子コンピューターを完成させて以降、日本の量子技術をさらに広げる重要な布石といえます。【2】中性原子方式の特長と拡張性量子コンピューターの要となるのは、0と1の両方を同時に表現できる量子ビットです。中でも中性原子方式は、個々の原子をレーザー光で捕捉・操作することにより量子ビットとして利用する手法であり、以下のような特長があります。動作温度が比較的高い(ミリケルビンではなくマイクロケルビン級)長時間の量子状態の保持(コヒーレンス時間が長い)高い空間制御性により多数のビット配列が可能理化学研究所が進める超伝導方式に比べて、極低温冷却などの厳しい環境条件を求められにくく、量子ビットの拡張性と安定性の両立が期待されています。とくに京大・高橋教授が用いるイッテイルビウム原子は、電子のエネルギー状態が極めて安定しており、高精度な時間制御と量子誤り訂正に向いた性質が知られています。これにより、従来よりも格段にスケーラブルな量子計算系の実現が視野に入ってきました。【3】中性原子方式のしくみと素材の違い(出典付き)中性原子方式では、レーザー光で原子を「光格子(optical lattice)」と呼ばれる状態に整列させ、その個々の原子を量子ビットとして制御します。原子は電気的に中性であるため、環境ノイズに対して強く、量子状態を長時間保てるのが大きな特徴です。この方式で現在注目されている原子素材は主に2つあります。■ イッテイルビウム(Ytterbium)京都大学・高橋義郎教授らが主導する研究で採用。核スピンが大きく、内部準位の選択肢が豊富で、複雑な量子操作が可能。時間周波数の安定性が高く、誤り訂正に適する。参照情報:Physical Review X DOI:10.1103/PhysRevX.14.041062 京都大学発表資料(2024年12月)■ ルビジウム(Rubidium)分子研・大森教授グループが利用。2025年に実機稼働を予定。操作が比較的シンプルで、量子ビット間の相互作用が制御しやすい。すでに多くの中性原子実験で使用されてきた実績ある元素。参照情報:naturephotonics 16, pages724–729 (2022)これら2つの原子は、それぞれ異なる強みを持ち、用途に応じた使い分けがなされています。今後の量子コンピューター開発において、素材選定が計算性能や実装性を左右する重要なファクターとなっていくでしょう。【4】2027年クラウド提供へ:量産と産業利用を視野にYaqumoは研究段階に留まらず、実用化を見据えた開発体制の整備に力を入れています。特に焦点となるのが、量子計算の精度を保つための量子誤り訂正技術の導入と、それに適合するソフトウェアの開発です。将来的には、量子クラウドサービスとして企業がウェブ経由でYaqumoの量子計算機にアクセスできるようにし、製造・物流・創薬・素材開発など幅広い分野への展開を計画しています。また、量産体制の構築も視野に入れ、社会実装への橋渡しを進めています。Yaqumo代表の中小司和広CEOは、「設計段階からスケーラビリティを意識し、段階的に処理能力を拡大できるアーキテクチャにする」と語り、大森・高橋両教授も引き続きアドバイザーとして現場を支えています。このように、Yaqumoの挑戦は単なる技術開発にとどまらず、日本の量子技術を国際的な競争に参入させるための礎となることが期待されています。〆以上、間違い・ご意見は 以下アドレスまでお願いします。 問題点に対しては 適時、返信・改定をします。nowkouji226@gmail.com2025/04/19‗初稿投稿 2025/04/20_改訂投稿【このサイトはAmazonアソシエイトに参加しています】Follow me!関連FacebookXBlueskyHatenaPocketCopy投稿ナビゲーション前の投稿: ゲオルク・レティクス_【コペルニクスと天動説をまとめた】-4/20改訂次の投稿: 中性原子方式量子コンピューターの静かな躍進:BECから始まる第3の革命 コメントを残す コメントをキャンセルコメントを投稿するにはログインしてください。