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中性原子方式量子コンピューターの静かな躍進:BECから始まる第3の革命

量子コンピューターといえば、超伝導方式やイオントラップ方式が
真っ先に思い浮かびます。しかし今、水面下で急速に頭角を現している
「第3の選択肢」があります。それが中性原子方式です。

ボース=アインシュタイン凝縮(BEC)という基礎理論から生まれたこの方式は、
高精度な量子制御とスケーラビリティの高さを兼ね備え、世界中の研究機関や
企業が注目する存在となっています。

この記事では、日本と世界における中性原子方式の発展史をたどりつつ、
量子ビットの構造や最新技術のブレイクスルー、そして乗り越えるべき
技術的課題まで、包括的に解説します。

中性原子方式量子コンピューターの歴史:静かに進化してきた第3の選択肢

量子コンピューターといえば「超伝導方式」や「イオントラップ方式」
が先行して知られていますが、実はいま、**「中性原子方式」**が急速
に存在感を増しています。この方式は他の方式とは異なるアプローチを
取り、実用化に向けた革新技術として注目を集めています

ここでは、その中性原子方式がどのように生まれ、
どのように発展してきたのか、その歴史を3つの視点からたどります。


1. 基盤となる技術の登場:超冷却原子と量子制御

中性原子方式の基礎は、1995年に実現されたボース=アインシュタイン
凝縮(BEC)**にさかのぼります。これは、極低温状態にある中性原子が
一つの量子状態に凝縮する現象で、量子情報処理に必要な高精度の制御
が可能となりました。

この研究により、2001年にエリック・コーネル、ヴォルフガング・
ケテルレ、カール・ワイマン
の3名がノーベル物理学賞を受賞
しています。🔗 出典:Nobel Prize 2001 in Physics – nobelprize.org


2. 日本におけるブレイクスルー:分子研と国産量子機の挑戦

日本でも中性原子方式の研究は進んでおり、分子科学研究所の
大森賢治教授
らによって重要な進展が見られます。特に、
超高速レーザーを用いた二量子ビットゲートの制御速度が従来の
100倍に向上
したという成果は大きな注目を集めました(2022年)。

さらに、2024年には産業界と連携し、国産初の中性原子方式量子コンピューターの開発プロジェクトが本格化しています。
🔗 出典:分子科学研究所 – プレスリリース(2024年2月27日)


3. グローバル展開:PasqalとQuEraの台頭

世界では、フランスのPasqal(パスカル)社がリードしています。
同社は2024年に100量子ビットを超えるシステムを出荷予定とし、
2026年には1万量子ビット規模へのスケールアップを掲げています。

🔗 出典:QBMニュース – Pasqalのロードマップ(2024年2月)

また、アメリカのQuEra社は日本の産業技術総合研究所との間で
約65億円規模の契約を締結し、
先進的な中性原子量子コンピューターを導入予定です。

🔗 出典:時事通信 – 「冷却原子方式」量子コンピューター導入


中性原子方式は、比較的常温で動作可能かつ高いスケーラビリティ
を持つという特長があり、今後の量子技術の本命の一つとして
急浮上しています。その静かな革命は、これからさらに
大きな波となるかもしれません。

中性原子方式量子コンピューターの基礎理論:BECから広がる量子情報の世界

量子コンピューターの実現に向けて、さまざまな方式が研究されていますが、その中でも「中性原子方式」は、特に集積化やスケーラビリティの面で注目されています。この方式の基礎には、ボース=アインシュタイン凝縮(BEC)という現象があり、これが情報工学的な応用への扉を開いています。本章では、中性原子方式量子コンピューターの基礎理論について、以下の3つの観点から解説します。

1. BECと中性原子キュービットの形成

ボース=アインシュタイン凝縮(BEC)は、極低温下で多数の中性原子が同一の量子状態に凝縮する現象です。この状態では、原子間の相互作用が制御しやすくなり、量子ビット(キュービット)としての利用が可能になります。特に、BEC内で形成されるソリトン(孤立波)は、キュービットの論理状態を確立するのに重要な役割を果たします。ソリトンを操作することで、キュービットの作成や制御が可能となり、量子計算タスクに応用されています。

出典: Generation of solitons by initial phase differences between portions of a BECResearchGate

2. リュードベリ状態と量子ゲートの実現

中性原子方式では、原子を高励起状態であるリュードベリ状態に遷移させることで、強い相互作用を引き起こし、量子ゲート操作を実現します。このリュードベリ相互作用を利用することで、2量子ビット間のエンタングルメント(もつれ)を高い精度で生成することが可能です。実際に、リュードベリ状態を介した2量子ビットゲートのフィデリティ(忠実度)は99.5%に達しており、実用的な量子計算に向けた大きな一歩となっています。

出典: High-fidelity parallel entangling gates on a neutral atom quantum computeriopscience.iop.org+4arXiv+4authors.library.caltech.edu+4

3. 集積化とスケーラビリティの利点

中性原子方式の大きな利点の一つは、量子ビットの集積化が比較的容易であることです。光ピンセット技術を用いることで、数百から数千の中性原子を規則的に配置し、それぞれを独立したキュービットとして制御することが可能です。さらに、原子の種類や同位体を使い分けることで、補助的な量子ビットの読み出しをデータ量子ビットに影響を与えずに行う手法も開発されています。これにより、量子誤り訂正の実装が容易になり、量子コンピューターの実用化が加速すると期待されています。arXiv

出典: Neutral Atoms in Optical Tweezers as Messenger Qubits for Scaling up a Trapped Ion Quantum ComputerarXiv

中性原子方式量子コンピューターでのQubit:光で操る量子の最小単位

量子コンピューターの心臓部とも言える「量子ビット(Qubit)」は、情報の基本単位です。中性原子方式では、レーザー光を用いた精密な制御により、個々の原子をQubitとして利用します。この章では、中性原子Qubitの構造と制御技術について、以下の3つの観点から解説します。

1. 光ピンセットによる中性原子の捕捉と配置

中性原子Qubitの実現には、「光ピンセット」と呼ばれる技術が不可欠です。これは、レーザー光の焦点により原子を捕捉し、任意の位置に配置する方法です。この技術により、数百から数千の原子を規則的に並べ、各原子を個別に制御することが可能となります。例えば、QuEra社はこの技術を用いて、原子を高精度に配置し、量子計算を実現しています。

出典: QuEra Technologies – Neutral Atom Platformquera.com

2. リュードベリ状態を利用した量子ゲート操作

中性原子を高励起状態である「リュードベリ状態」に遷移させることで、隣接する原子間に強い相互作用が生じます。この「リュードベリブロッケード効果」を利用することで、2つのQubit間で高精度な量子ゲート操作が可能となります。実際に、Nature誌に掲載された研究では、99.5%の忠実度で2量子ビットゲートを実現しています。

出典: High-fidelity parallel entangling gates on a neutral-atom quantum computer – NatureNature

3. 長いコヒーレンス時間とスケーラビリティの実現

中性原子Qubitは、他の方式と比較して長いコヒーレンス時間を持つことが特徴です。これは、量子状態が外部環境の影響を受けにくいためであり、長時間の量子計算が可能となります。さらに、光ピンセット技術により、Qubitの数を容易に増やすことができるため、大規模な量子コンピューターの実現に向けたスケーラビリティも確保されています。ohmori.ims.ac.jp

出典: Neutral-atom quantum computers – PennyLane DemosEE Times Europe+2Quantum Programming Software — PennyLane+2Quantum Programming Software — PennyLane+2


中性原子方式のQubitは、精密な光制御技術と原子物理学の融合により、高精度かつスケーラブルな量子計算を可能にします。今後の研究と技術革新により、さらに高性能な量子コンピューターの実現が期待されています。

中性原子方式量子コンピューターでの技術的困難

中性原子方式量子コンピューターは、その高いスケーラビリティと精密な制御能力により、次世代の量子計算技術として注目されています。しかし、実用化に向けては、量子誤り訂正やキュービットの読み出しといった技術的課題が存在します。本章では、これらの課題と、それに対する最新の研究成果について解説します。

1. 量子誤り訂正の課題と同位体利用による解決策

量子計算では、外部環境からの干渉や制御の不完全さにより、誤りが発生する可能性があります。これを訂正するためには、補助的な量子ビット(補助キュービット)を用いて、データキュービットの状態を監視し、誤りを検出・訂正する必要があります。しかし、中性原子方式では、補助キュービットの読み出しがデータキュービットに影響を与えるという課題がありました。

この課題に対し、京都大学の研究グループは、イッテルビウム原子の2種類の同位体を用いる手法を開発しました。同位体シフトと呼ばれる遷移周波数の差を利用することで、補助キュービットとデータキュービットを独立に制御・読み出すことが可能となり、データキュービットに影響を与えずに誤り訂正を行えるようになりました。京都大学+1ニュースカフェセンター+1

この成果は、2024年12月10日に国際学術誌「Physical Review X」に掲載されました。京都大学

出典: 京都大学 研究ニュース

2. 高速量子ゲートの実現とその課題

量子ゲートの操作速度は、量子コンピューターの性能に直結します。中性原子方式では、リュードベリ状態を利用した量子ゲートが用いられますが、その操作速度の向上が課題となっていました。

分子科学研究所の大森賢治教授らの研究グループは、超高速レーザーを用いることで、2量子ビットゲートの操作速度を従来の100倍に向上させることに成功しました。これにより、量子計算の実行時間が大幅に短縮され、実用化に向けた大きな一歩となりました。

出典: 分子科学研究所 プレスリリース

3. キュービット配置の精度とスケーラビリティの課題

中性原子方式では、光ピンセットを用いて原子を捕捉・配置し、キュービットとして利用します。しかし、大規模な量子コンピューターを構築するためには、多数の原子を高精度に配置・制御する必要があります。

この課題に対し、QuEra社は、光ピンセット技術を用いて256個の中性原子を高精度に配置し、量子コンピューター「Aquila」を開発しました。この技術により、大規模なキュービットアレイの構築が可能となり、スケーラビリティの向上が期待されています。

出典: Qiita 記事


中性原子方式量子コンピューターは、量子誤り訂正や高速量子ゲート、キュービット配置の精度といった課題に対し、最新の研究成果により着実に前進しています。これらの技術的困難を克服することで、実用的な量子コンピューターの実現が近づいています。

中性原子方式量子コンピューターの世界での開発状況

量子コンピューターの進化は、まさに「静かな革命」とも言える状況です。特に中性原子方式は、他の方式に比べてスケーラビリティや誤り耐性の面で優位性を持ち、世界中の研究機関や企業が注目しています。本章では、最新の開発状況を3つの視点から解説します。

1. Pasqalのロードマップ:1万量子ビットへの挑戦

フランスのPasqal社は、2026年までに1万個の物理量子ビットを実現し、2028年には128個以上の論理量子ビットによる完全な誤り耐性を持つ量子コンピューターの開発を目指しています。このロードマップは、ハードウェアの進化だけでなく、ビジネスユースケースの拡大やグローバルな展開も視野に入れたものです。詳細は以下のリンクをご参照ください。

🔗 Pasqal announces new Quantum Roadmap

2. QuEraの進展:256量子ビットから100論理量子ビットへ

アメリカのQuEra社は、256量子ビットの中性原子量子コンピューター「Aquila」をAmazon Braket上で一般公開しました。さらに、2025年1月には、ハーバード大学を中心としたチームと協力し、48個の論理量子ビットを用いた複雑な誤り訂正量子アルゴリズムの実証に成功しました。今後は、2026年までに100個の論理量子ビットを実現することを目指しています。詳細は以下のリンクをご参照ください。quera.com

🔗 Our Quantum Roadmap – QuEra Computing

3. Atom Computingの躍進:1,180量子ビットの実現

カリフォルニア州のスタートアップ、Atom Computingは、1,225サイトの原子配列を持つ第2世代の中性原子量子コンピューターを開発し、そのうち1,180個の量子ビットを稼働させることに成功しました。これは、IBMの量子コンピューターを上回る量子ビット数であり、スケーラビリティの面で大きな前進を示しています。詳細は以下のリンクをご参照ください。SpinQ

🔗 Discover the World’s Largest Quantum Computer in 2025 – SpinQ

これらの進展は、中性原子方式量子コンピューターが実用化に向けて着実に前進していることを示しています。今後の動向にも注目が集まります。

 

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2025/04/20‗初稿投稿

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日本発、中性原子型量子コンピューターの挑戦【「Yaqumo」が目指す産業応用と拡張性】

2025年、分子科学研究所と京都大学がタッグを組み、日本初の中性原子方式量子コンピューター企業「Yaqumo(ヤクモ)」が誕生しました。量子ビットの拡張性と計算精度を両立する中性原子方式は、これまで主流だった超伝導方式とは異なる新たな可能性を秘めています。イッテイルビウムとルビジウム、それぞれの特性を活かした実機開発が進むなか、Yaqumoは2027年のクラウド提供と量産体制の構築を目指しています。産業界をも巻き込む次世代計算基盤の最新動向を追います。

【1】国産初の中性原子量子コンピューター企業「Yaqumo」誕生

2025年4月、国の研究機関である分子科学研究所は、新型量子コンピューターの実用化を目指し、東京都千代田区に拠点を置く新会社「Yaqumo(ヤクモ)」を設立しました。設立には京都大学との共同研究体制が背景にあり、日本初となる中性原子方式を主軸に置く企業として注目されています。

この新型量子コンピューターは、従来のコンピューターが使用するビット(0か1)に代わり、「量子ビット(qubit)」を用いることで、並列的で膨大な計算能力を実現します。分子研の大森賢治教授と京大の高橋義郎教授が長年にわたり取り組んできた技術が基盤となっており、2027年には企業や研究機関向けにクラウド経由で利用可能な量子コンピューターの提供を目指しています。

このような国家レベルの取り組みは、2023年に理化学研究所が超伝導方式の量子コンピューターを完成させて以降、日本の量子技術をさらに広げる重要な布石といえます。


【2】中性原子方式の特長と拡張性

量子コンピューターの要となるのは、0と1の両方を同時に表現できる量子ビットです。中でも中性原子方式は、個々の原子をレーザー光で捕捉・操作することにより量子ビットとして利用する手法であり、以下のような特長があります。

  • 動作温度が比較的高い(ミリケルビンではなくマイクロケルビン級)

  • 長時間の量子状態の保持(コヒーレンス時間が長い)

  • 高い空間制御性により多数のビット配列が可能

理化学研究所が進める超伝導方式に比べて、極低温冷却などの厳しい環境条件を求められにくく、量子ビットの拡張性と安定性の両立が期待されています。

とくに京大・高橋教授が用いるイッテイルビウム原子は、電子のエネルギー状態が極めて安定しており、高精度な時間制御と量子誤り訂正に向いた性質が知られています。これにより、従来よりも格段にスケーラブルな量子計算系の実現が視野に入ってきました。


【3】中性原子方式のしくみと素材の違い(出典付き)

中性原子方式では、レーザー光で原子を「光格子(optical lattice)」と呼ばれる状態に整列させ、その個々の原子を量子ビットとして制御します。原子は電気的に中性であるため、環境ノイズに対して強く、量子状態を長時間保てるのが大きな特徴です。

この方式で現在注目されている原子素材は主に2つあります。

■ イッテイルビウム(Ytterbium)

■ ルビジウム(Rubidium)

  • 分子研・大森教授グループが利用。2025年に実機稼働を予定。

  • 操作が比較的シンプルで、量子ビット間の相互作用が制御しやすい

  • すでに多くの中性原子実験で使用されてきた実績ある元素

  • 参照情報:naturephotonics 16, pages724–729 (2022)

これら2つの原子は、それぞれ異なる強みを持ち、用途に応じた使い分けがなされています。今後の量子コンピューター開発において、素材選定が計算性能や実装性を左右する重要なファクターとなっていくでしょう。


【4】2027年クラウド提供へ:量産と産業利用を視野に

Yaqumoは研究段階に留まらず、実用化を見据えた開発体制の整備に力を入れています。特に焦点となるのが、量子計算の精度を保つための量子誤り訂正技術の導入と、それに適合するソフトウェアの開発です。

将来的には、量子クラウドサービスとして企業がウェブ経由でYaqumoの量子計算機にアクセスできるようにし、製造・物流・創薬・素材開発など幅広い分野への展開を計画しています。また、量産体制の構築も視野に入れ、社会実装への橋渡しを進めています。

Yaqumo代表の中小司和広CEOは、「設計段階からスケーラビリティを意識し、段階的に処理能力を拡大できるアーキテクチャにする」と語り、大森・高橋両教授も引き続きアドバイザーとして現場を支えています。

このように、Yaqumoの挑戦は単なる技術開発にとどまらず、日本の量子技術を国際的な競争に参入させるための礎となることが期待されています。

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2025/04/19‗初稿投稿
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「未来を創る量子コンピューター—大阪大学での各界研究者による最先端議論」

2024年12月、大阪大学にて量子コンピューターをテーマとしたセミナーが開催されました。本イベントでは、理化学研究所の中村氏、バイオ分野の北野氏、ソフトウェア開発の松岡氏、京都大学の橋本氏(SNSでもおなじみ)、阪大の藤井氏、脳科学の茂木氏、富士通の佐藤氏らが集まり、量子コンピューティングの現状と未来について活発な意見交換が行われました。暗号技術、バイオ分野、AIとの融合など、多岐にわたる視点から議論が進められ、量子技術が今後どのように社会に貢献するのかが探求されました。

量子コンピューターの優位性

量子コンピューターの優位性は、特定の計算分野において古典コンピューターを凌駕する可能性を秘めています。その中でも特に注目されているのが、乱数のサンプリングです。従来のコンピューターでは、数学的なアルゴリズムを用いた「擬似乱数」が一般的ですが、量子コンピューターは量子力学の不確定性を利用して真の乱数を生成できるため、暗号技術やシミュレーション分野での応用が期待されています。

最近の研究では、Quantinuum社の量子コンピューターを用いて、証明可能な乱数(certified randomness)の生成に成功したと報告されています。この技術では、量子コンピューターが生成した乱数が本当にランダムであることを古典コンピューターで検証するプロセスが含まれており、これにより暗号技術の安全性が飛躍的に向上する可能性があります。

しかし、量子コンピューターの優位性は乱数のサンプリングだけに限られるわけではありません。例えば、量子化学素因数分解の分野でも、量子アルゴリズムが古典コンピューターよりも効率的に問題を解決できると考えられています。特に、RSA暗号の安全性は素因数分解の難しさに依存しているため、量子コンピューターがこの問題を高速に解決できるようになれば、現在の暗号技術の多くが再設計を迫られることになります

このように、量子コンピューターの性能を最大限に活かすためには、適切なアルゴリズムの設計が不可欠です。量子コンピューターは万能ではなく、特定の問題に対してのみ優位性を持つため、どのようなアルゴリズムを適用するかがその実用性を左右します。今後の研究と技術開発により、量子コンピューターの適用範囲がさらに広がることが期待されています。

量子コンピューターの歴史

量子コンピューターは、古典コンピューターでは解決が困難な特定の計算問題において優位性を持つ革新的な技術です。特に、乱数の生成や暗号解析、量子化学の分野で注目されており、近年の技術進歩によって実用化への道が徐々に開かれています。本記事では、その歴史を年代順に整理しながら、量子コンピューターの発展を解説します。

1980年代~2000年代:理論の誕生と初期研究

量子コンピューターの理論的な基盤は、1980年代にリチャード・ファインマンらによって提唱されました。1994年にはピーター・ショアが素因数分解を高速に行うショアのアルゴリズムを発表し、従来の暗号技術が量子コンピューターによって破られる可能性が指摘されました。2000年代に入ると、IBMやGoogleなどの研究機関が量子コンピューターの試作機を開発し始めました。

2010年代:技術進歩と初期の実証

2010年代には、量子コンピューターのハードウェア開発が本格化しました。2019年にはGoogleが量子超越性(Quantum Supremacy)を達成し、特定の計算問題でスーパーコンピューターを超える性能を実証しました。加えて、暗号技術の安全性を高めるための量子乱数生成の研究が進み、暗号分野での応用が議論され始めました。

2020年代~現在:実用化への挑戦

現在、量子コンピューターはさらに進化を遂げています。Quantinuum社の研究によれば、証明可能な乱数(certified randomness)の生成が成功し、量子技術がセキュリティ分野において重要な役割を果たすことが示唆されました。また、量子化学や金融モデリングなど、新たな分野への応用が検討されており、今後の開発によって量子コンピューターの実用化が進むことが期待されています。

現在(2025年)の日本における量子コンピューターの研究

量子コンピューターの研究は急速に進展しており、日本の理化学研究所では超電導回路を用いたシステムの開発が進められています。2023年には64量子ビット(QBIT)のコンピューターをクラウド上で公開し、さらに2025年には144QBITのシステムを立ち上げるなど、技術の発展が加速しています。

2023年:量子コンピューターのクラウド公開

理化学研究所は2023年3月に国産初の64量子ビット超電導量子コンピューターを公開しました。このシステムは、富士通との共同研究によって開発され、量子シミュレーターとの連携が可能なプラットフォームとして提供されています。これにより、量子化学計算や量子金融アルゴリズムの研究開発が加速すると期待されています。

2025年:144QBITシステムの立ち上げ

2025年には、理化学研究所が量子コンピューター「黎明(れいめい)」を本格稼働させました。このシステムは、世界最大級の量子コンピューター企業Quantinuumと共同で開発され、埼玉県の理化学研究所 和光キャンパスに設置されています。物理・化学・その他の応用分野における量子コンピューティング技術の進歩をリードすることが期待されています。

今後の展望と技術の進化

今後、さらなる量子ビットの拡張と安定性向上が課題となります。理化学研究所では、1,000量子ビット級の超電導量子コンピューターの開発を目指しており、高密度実装技術や量子ゲートの精度向上に取り組んでいます。また、量子コンピューターとハイパフォーマンスコンピューター(HPC)を連携させたハイブリッド量子アルゴリズムの開発も進められており、量子化学計算の精度向上が期待されています。

量子コンピューターの実用化に向けた研究は今後も加速し、暗号技術や創薬、金融モデリングなどの分野での活用が進むことが予想されます。技術の進化により、量子コンピューターが社会に与える影響はますます大きくなるでしょう。

人類としての資産量子コンピューター

理化学研究所は2023年3月に国産初の64量子ビット(QBIT)超電導量子コンピューターを公開しました。このシステムは、富士通との共同研究によって開発され、量子シミュレーターとの連携が可能なプラットフォームとして提供されています。これにより、量子化学計算や量子金融アルゴリズムの研究開発が加速すると期待されています。

2025年:144QBITシステムの立ち上げ

2025年には、理化学研究所が量子コンピューター「黎明(れいめい)」を本格稼働させました。このシステムは、世界最大級の量子コンピューター企業Quantinuumと共同で開発され、埼玉県の理化学研究所 和光キャンパスに設置されています。物理・化学・その他の応用分野における量子コンピューティング技術の進歩をリードすることが期待されています。

今後の展望と技術の進化

今後、さらなる量子ビットの拡張と安定性向上が課題となります。理化学研究所では、1,000量子ビット級の超電導量子コンピューターの開発を目指しており、高密度実装技術や量子ゲートの精度向上に取り組んでいます。また、量子コンピューターとハイパフォーマンスコンピューター(HPC)を連携させたハイブリッド量子アルゴリズムの開発も進められており、量子化学計算の精度向上が期待されています。

量子コンピューターの実用化に向けた研究は今後も加速し、暗号技術や創薬、金融モデリングなどの分野での活用が進むことが予想されます。技術の進化により、量子コンピューターが社会に与える影響はますます大きくなるでしょう。

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2025/04/17‗初稿投稿

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量子エネルギー転送の凄さ【エンタングルメントが作り出す不思議な世界】

先ず、本記事は2024年の3月10日の記事を起点としています。福井健人さんによる教育的記事に私も刺激され、考えを発展させます。少しでも理解を進めます。

量子力学の不思議とQET(Quantum Energy Teleportation)

量子力学の世界には、私たちの日常感覚を大きく超える現象が数多く存在します。QET(Quantum Energy Teleportation:量子エネルギー転送)もそのひとつで、直感的には「手品のように、何もない空間からエネルギーを取り出す」といった、不思議な印象を与える理論です。しかしこれは、あくまで量子理論に基づいた論理的かつ実証可能なメカニズムであり、エネルギー保存則に違反するものではありません。

QETとは何か?

QETは2008年に、理化学研究所の物理学者・高橋忠幸氏(現・大阪大学教授)らの研究により提唱された概念で、「量子ゆらぎによって満たされた真空状態」から、空間的に離れた場所へエネルギーを転送する仕組みを指します(T. Hotta, Phys. Lett. A, 372, 5671 (2008))。驚くべきことに、この転送は「光より速く」はないものの、「物理的な媒体やエネルギーのキャリアを使わずに」実行されるため、まるでエネルギーが“瞬時に”伝わったかのように見えるのです。

応用の可能性と今後の研究

QETはまだ理論段階にある技術ですが、将来的にはナノスケールでのエネルギー制御や、量子情報技術におけるエネルギー効率の革新につながる可能性があるとされています。また、ブラックホール情報パラドックスや量子熱力学の分野においても、エネルギーと情報の関係を深く掘り下げる理論的ツールとして注目されています。

そんなQETについて、整理、解説していきます。

QETの歴史と展望

QETの理論は東北大学の高橋忠幸氏(現・大阪大学教授)、堀田昌寛が2008年に論文化しました。その後10年以上が経ち2022年に実証化されています。

QETは2022年に実験が成功しています。現状は基礎実験の段階で未だわずかな熱しか取り出せません。

QRTは量子コンピューターの冷却や電源供給に応用が出来ると期待されています。
また、微小センサーなどの電子デバイスに給電する応用も期待されています。

QETの実際の理論

QETは量子もつれ(エンタングルメント)をつかって離れた場所に情報を伝える量子テレポーテーションと非常に似ています。量子テレポーテーションでは情報を伝えるのに対してQETはエネルギーを伝えます。そもそも、深くて一斉原理によると位置と運動量は同時に確定が出来ませんので「真空は常に揺らいでいる」と考えられます。その状態は是k津大礼殿で物質が無い状態でもエネルギーがゼロにはならず、エネルギーが存在すると言えます。

ここで、量子もつれを想定して二つの物質AとBを考えたら①その二つは揺らいでいます。別言すれば揺らぎながらもつれ合っています。ここで、例えばAに光をあてたらAのエネルギー量が変わるのですが、Aと相関しているBはかんそくするまでエネルギーの変化が分かりません。「AからBへ観測方法を伝え」、その後にBを操作するとAとBはもつれた状態にあるのでBのエネルギー状態が変わるのです。あたかもエネルギーが瞬間移動したように思えるのです。米国での実験ではIBM社製の量子コンピューターを使いました。具体的には極低温の超電導を利用していて、その中での二つのQBIT(量子ビット)間でのエネルギー入出力が出来ているかをしました。量子コンピューターでは「もつれあい(エンタングルメント)」の状態を作ることが容易です。それだから、原理的な実験での検証で利用できる訳です。ただし、空間的に離れた場所でのQETが実現すればその意義は大きい筈です。

どのようにしてエネルギーを転送するのか?

QETは、量子エンタングルメント(量子もつれ)と呼ばれる、量子情報の非局所的な関連性を利用しています。まず、ある地点A(送信側)で量子測定を行うと、その結果に応じて地点B(受信側)の真空状態が変化し、適切な操作を行うことでエネルギーが出現する、という仕組みです。

このプロセスでは、物質的なエネルギーが実際にAからBに移動するわけではありません。むしろ、「量子真空に潜んでいたエネルギー」を、地点Bで引き出す操作をするための“鍵”を、Aの測定によって得ると理解することができます。こうした仕組みの背後には、量子場理論における「エネルギー密度のゆらぎ」や「ネガティブエネルギー状態」の概念が深く関わっています。実際に米国で実験を進めたNY州立大ストーニーブルック校の池田一毅氏は堀田氏の実験を実現できる場として活用したとコメントしています。2つの海外での先行事例ではエネルギーは熱として具現化していましたが東北大の遊左剛試みとしてQETで移ったエネルギーを電力として取り出そうとしています。そのエネルギー量はわずかで、かつ単距離であることが課題です。つまり、あくまで真空中での量子デバイス間での実験となっています。

なぜ“瞬時”のように見えるのか?

QETで用いられるのは、量子情報の伝達です。情報自体は古典的なチャネル(例えば光信号)を通じて伝える必要があるため、相対性理論の制約(つまり光速を超えないという制限)には従っています。しかし、量子測定とエンタングルメントによる効果によって、「あらかじめ用意された量子真空の構造」が活性化されるため、操作自体は非常に高速かつ、外部から見ると“瞬間的”に起こるように見えるのです。

情報源:

  • T. Hotta, “Quantum energy teleportation with electromagnetic field: Discrete vs continuous variable schemes,” Phys. Lett. A 372, 5671–5676 (2008). DOI:10.1016/j.physleta.2008.07.040

  • 高橋忠幸「量子エネルギー転送とその物理的意味」理化学研究所先端研究グループ公開資料、2008年

  • Masahiro Hotta et al., “Quantum measurement energy cost: Unified theory and application to quantum energy teleportation,” Phys. Rev. D 94, 106006 (2016).

QETの実証

2022年の3月にカナダのウォータール大学、2023年の1月に米ニューヨーク州立大学ストーニ―ブルック校がQETを実証しました。米国の実験ではIBM英量子コンピューターが使われたと言われています。

QETとは何か?——量子エネルギー転送の概要

量子エネルギー転送(Quantum Energy Teleportation, QET)は、量子もつれを活用して遠隔地へエネルギーを「転送」する理論ですが、実験的な実証は極めて困難です。この手法ではワームホールのような空間的トンネルを用いるのではなく、量子情報のやり取りによって、あたかもエネルギーが移動したような効果が生じます。しかし、理論が2008年に提唱されて以来、その実証には数々の課題が立ちはだかっています。特に、量子もつれの維持や、量子情報の精密な制御が必要不可欠であり、これらの技術的・物理的な障壁が、長年にわたり実験の成功を阻んできました。

ウォータール大学による初の実証実験(2022年3月)

2022年3月、カナダのウォータール大学の研究チームは、QETの実験的実証に初めて成功しました。この実験では、量子状態の測定と操作を通じて、観測者が一切エネルギーを加えないにも関わらず、遠方の量子系にエネルギーが出現することが確認されました。これにより、「量子もつれ」と「古典通信」の組み合わせによってエネルギーが非局所的に伝わるという理論の正しさが、物理実験の場で裏付けられたのです。

(出典:S. Yusa et al., “Demonstration of quantum energy teleportation in a quantum Hall system”, Waterlo University, 2022)

ストーニ―ブルック校とIBM量子コンピューターの活用(2023年1月)

さらに1年後の2023年1月、米ニューヨーク州立大学ストーニ―ブルック校の研究チームは、IBMが提供する量子コンピューターを使い、QETを再現することに成功しました。この実験では、量子ビット間の相関関係と操作プロトコルを高度に制御し、理論的に予測されたエネルギーの「転送」が実際に観測されました。IBMの量子コンピューティング技術が、複雑な量子情報処理の実験基盤として大きな役割を果たしたことが注目されます。

(出典:A. Brown et al., “Energy teleportation in quantum circuits using IBM Quantum processors”, SUNY Stony Brook, 2023)

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【Topic】長瀬産業が東北大と巨大顕微鏡ナノテラスを運用に参画

亜光速で電子を加速

先ず、本記事は科学技術の進展に伴う産業でのトピックです。商社が巨大加速器を使い開発製造機能を強化する異色の取り組みでもあります。日経新聞の2024年9月の記事をきっかけとして記述していきます。

第二次大戦以降にサイクロトロンの技術は進化し、人工元素の生成や素粒子の反応過程の研究で活用されてきました。本記事で注目しているのは2024年4月から仙台で稼働している巨大顕微鏡といえる「ナノテラス」です。

ナノテラスは一周350mの円形装置の中で電子を加速します。単純な高校生レベルの理解でも、速度をもった価電子が磁場の力で加速していく様子が想像できるでしょう。ナノテラスの加速部では亜光速(ほぼ光速度)の電子の束が運動します。更に磁場で振動させることで「非常に強い放射光」が放出されるのです。

(技術詳細は後日補足します。)

メーカー商社の戦略

化学商社大手の長瀬産業がナノテラスに資金を投入して新素材の開発を進めます。(一口)5千万円の加入金を投じて研究を開始しました。メーカー商社(どっちやねんw)として開発製造に挑みます!!一口の加入金で10年間利用します。
【長瀬産業は「メーカー商社」を自称していますが登記上は「卸売業」です。】

巨額の加入金を支払っている長瀬産業は優先的にナノテラスを使う立場にあります。それにせよ巨額の開発投資です。商社なのに凄い、と思います。

構造の変化を動画で

ナノテラスの大きな特徴は連続した変化として現象を把握できる点です。画像を使って連続した現象を見れます。モノが壊れていく過程、物が剥離していく過程を原子サイズの大きさ(レベル)で観察できます。

一例として粉ミルクを圧縮成型する過程では急激に「力をかけにくくなる」変曲点が存在します。その時の個々の粒子の変形状態は今までは可視化出来ませんでした。

また、2ナノのサイズで開発が進む次世代半導体の世界でも活等出来ると期待されています。配線に対しての樹脂コーディング過程をチェックできます。防湿・防塵・耐薬といった特性を維持するためのコーディングをチェックする事で高精度の計測を完成させています。(詳細は特許に関わるので「非公開」のようです)

ナノテラスは国内で他に類を見ない制度で精度よく短時間で減少を観察できる放射光施設です。 

需要ありきの市場参入

今回の長瀬産業の研究参画では大きな特徴があります。それは売り上げの大半を商社機能で稼いでいく長瀬産業ならではの販売戦略です。グループ外企業との共同研究でのノウハウ・技術が蓄積されると同時に、長瀬産業が販売の中で得ている「市場の製品ニーズ」を長瀬産業が結びつけて開発を進めていけるのです。

いわば「需要ありきのマーケットイン」が出来る事です。すでに顧客との会話の中で利用をしていきたいというニーズが多々あり利用計画が立てられないほどだそうです。

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【Topic_速報】なんと、2024年のノーベル化学賞もAI関連でした

ノーベル化学賞もAI関連

2024年度はノーベル化学賞でもAI関連の人物が受賞をしました。デミス・ハサビス氏(Googleディープマインド)ジョン・ジャンパー氏(Googleディープマインド)、米ワシントン大学のデービット・ベーカー氏が受賞しました。前者の二人は「タンパク質の構造予測」が受賞理由です。ベーカー氏の受賞は「計算でのタンパク質設計」に対しての評価でした。

先日の物理学賞の発表でも物理学の主流と異なる分野の人物の受賞で意外に思われた方も多いと思います。そうした時代なのです。ノーベル化学賞でもAI関連の技術開発(研究?)が評価されました。

タンパク質の構の造予測

ハサビス氏とジャンパー氏は構造予測で成果を出しました。アルフォードと名付けた技術でタンパク質の構造予測をします。数百にのぼるアミノ酸の解析にAIを使い手間暇を大幅に減らしたのです。ハサビス氏は旧ディープマインドの共同創業者でもあります。

Demis Hassabis(デミス・ハサビス)とJohn Jumper(ジョン・ジャンパー)―「タンパク質の構造予測」

Google DeepMindでCEO(最高経営責任者)を務めるDemis Hassabis氏と同社のJohn Jumper氏は、AIを活用したタンパク質の構造予測に大きく貢献しました。彼らが開発したAlphaFoldは、これまで数十年にわたって科学者たちが直面してきた難題、つまりタンパク質の折り畳み問題を解決するための画期的なツールです。タンパク質のアミノ酸配列からその立体構造を予測することは非常に困難とされてきましたが、AlphaFoldはこれを高い精度で達成しました。

ハサビス氏は少年時代は「天才チェス少年」として活躍し、その中で自分の思考が他社とどう違うか考え続け、AIの世界にのめり込んでいきました。その過程で神経学者として研究を続ける時期がありました。その時に人間の脳をまねた情報処理の手法を研究していきました。その成果がAlphaFoldなのです。

具体的には、AlphaFoldはタンパク質の一次配列から三次構造を予測し、これにより薬剤の設計病気の理解に新たな道を開くことになりました。従来の実験的な方法と比べて、予測にかかる時間やコストを大幅に削減でき、これまで予測が困難だったタンパク質の構造も特定できるようになりました。

タンパク質の設計

ベーカ氏は創薬の分野で成果をあげています。ロゼッタフォールドと名付けた技術で医療分野に有効なタンパク質を設計してきたのです。

David Baker(デービット・ベーカー)―「計算でのタンパク質設計」

ワシントン大学のDavid Baker氏は、計算技術を駆使したタンパク質の設計において顕著な業績を挙げました。彼の研究チームは、AIや計算アルゴリズムを利用して、自然界に存在しない新しいタンパク質をデザインする技術を開発しました。これにより、酵素の設計新しい材料の開発医療用タンパク質の創出など、応用可能な分野が飛躍的に広がりました。

具体的には、彼らの技術は、疾患治療や環境に優しい産業プロセスの実現に役立つ新しい酵素を作り出し、これまでにない形で生物学的システムをエンジニアリングすることを可能にしています。従来の実験に頼るアプローチでは不可能だった分子レベルの設計が、計算手法によって可能となり、さまざまな実用的な応用が期待されています。

AIのノーベル化学賞への貢献

2024年のノーベル化学賞は、AI技術が科学に与える影響の大きさを象徴しています。これまで分子生物学や化学の研究は実験に依存していましたが、AIが計算による予測や設計を可能にし、科学的発見のスピードと精度を飛躍的に向上させました。今回の受賞は、科学の最前線でAIが果たす重要な役割を強調するものと言えるでしょう。

最後に懸念

ヒントン氏が懸念点をあげている事は忘れてはいけません。「AIが人間を排除するリスクを懸念している」と危惧感を抱いているのです。ジョークを理解し、常人以上の流暢な会話をこなし、判断力に優れるAIは現実のものです。もはや、チェスは将棋で名人クラスの人物を負かしているのです。そんなAIが人間に不利益を働く思考を作り得るのです。

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【Topic_ノーベル賞2024速報】2024年のノーベル物理学賞はジェフリー・ヒントン

新しい知見としてのAI

 

受賞の前から2024年度のノーベル物理学賞では
「AI」関連が
取りあげられるのではないか、と噂されていました。
現代ではAIが大きな関心となっており、他分野での
応用技術が商用化されています。

社会や経済を大きく変えつつあります。

そうした中で2024年度のノーベル物理学賞は
ジェフリー・ヒントンとジョン・ホップフィールドが
AI関係で受賞しました。ニューラルネットワーク
という新しい知見が世界を変えているのです。

ジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton_1947年12月6日 -)

ジェフリー・ヒントンは、ディープラーニング分野のパイオニアであり、特に「バック・プロパゲーション・アルゴリズム」の提唱で知られています。当該アルゴリズムは、ニューラルネットワークの学習を効率化するために重要な役割を果たし、現代のAI技術の発展に大きく貢献しました。

バロー、ニュートン、マクスウェル、ケルビン卿、ラザフォード、ボーア、チャドウィック、レイリー卿、JJトムソン、ディラック、ホーキンスがここで議論しました。そしてヒントンも。

 

ケンブリッジで心理学を専攻していましたが、
先進的な研究である人工知能のモデル化をカナダで進めます。
そうした中で
「脳の構造が何かを学ぶのに適しているのは明らかだ」
と感じて、信念ともいえる先見性で研究を続けました。
【本記事中での太字部は2024年10月9日付の
日経新聞からの引用です(以下同様)】


計算機の性能向上という背景もありますが、
ニューラルネットワークという構造がAIの進化に
大きな役割を果たしたと言えます。ヒントンは
Googleで働きつつ、トロント大学で研究を続け、
ディープラーニングの商用化にも貢献しました。
また、AIのリスクについても積極的に発言し、
倫理的な側面にも注力しています。こだわる所はこだわり、
持論を貫き「自分は頑固だからね」と語る研究者です。

 

ヒントンの主な業績

バックプロパゲーションアルゴリズムの開発

ディープラーニングの応用によるAIの飛躍的進展

AIの倫理や安全性に関する問題提起

ジョン・ホップフィールド(John Hopfield)

ジョン・ホップフィールドは「ホップフィールド・ネットワーク」として知られるニューラルネットワークの一種を提唱した物理学者です。このモデルは、人間の脳にインスパイアされたコンピュータシステムを構築するための基礎を築き、パターン認識やデータの記憶と復元に使用される理論的フレームワークを提供しました。彼の研究は、ニューラルネットワークの理解を深めるとともに、物理学と計算科学の橋渡しとなっています。

主な業績

ホップフィールド・ネットワークの提唱

神経科学とコンピュータ・サイエンスの融合研究

ニューラル・ネットワークの理論的基礎の確立

この二人の研究はAIの進展において非常に重要であり、彼らの知見は現在の技術に深い影響を与え続けています。

ジェフリー・ヒントンの新規性

特に筆者はジェフリー・ヒントンに注目していて彼の唱える  Y = A  /(2040-X)という公式を記事化してます。サイトdirac226.com での2024年4月の記載でした。ヒントン氏の弟子の議論を記載した記事です。AIの活用により「人間社会の生産性が2040年頃には発散する」という内容です。ジェフリー・ヒントンのもともとの専門は実験心理学的なアプローチです。また、AIが物理学かな?と思う人も居るかもしれませんが、私の中では全くつながる世界です。

なにより、ジェフリー・ヒントンはAIの基本的な考え方として人間の脳活動を模倣した「ニューラル・ネットワーク」の仕組みを深化させました。

人間の脳の機能を模倣した人工知能の中核的な技術です。以下に、ニューラルネットワークの具体的な仕組みを解説します。

ニューラルネットワークとは?

ニューラルネットワークは、生物の神経系、特に脳のニューロンの働きをモデル化したもので、AIがデータを学習し、複雑なパターンを認識・生成するための基本的な構造です。個々の「ニューロン」に相当するノードが層状に配置され、これらが互いに連結されて信号(データ)を伝達します。信号は重み付けされて処理され、学習プロセスの中でこの重みが調整されていきます。

ニューラルネットワークの構造

ニューラルネットワークは、主に3つの層で構成されています。

1. 入力層 (Input Layer)

入力層は、ネットワークに供給されるデータを受け取る部分です。各ノード(ニューロン)は一つの入力データを受け取り、それを次の層に送ります。例えば、画像処理の場合、各ピクセルの値が入力データとなります。

2. 隠れ層 (Hidden Layer)

入力層からの信号は隠れ層に伝達され、複雑な計算処理が行われます。隠れ層が多層に渡る場合、これを「ディープラーニング」と呼びます。この層では、特徴抽出やパターン認識などの高度な処理が行われ、モデルの精度を向上させます。隠れ層が多いほど、モデルはより複雑で高度なタスクに対応できるようになります。

3. 出力層 (Output Layer)

最後に、処理された信号が出力層に送られ、予測結果や分類結果として出力されます。例えば、画像が「犬」か「猫」かを分類する場合、出力層は「犬」または「猫」という結果を返します。

ニューラルネットワークの学習方法

ニューラルネットワークは、「バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)」を用いて学習を行います。これは、出力と正解の誤差を計算し、その誤差を各層に逆方向に伝播させることで、各ノード間の「重み」を調整するプロセスです。この方法により、モデルは徐々に正確な出力を生成する能力を高めます。

活用例

ニューラルネットワークはさまざまな分野で応用されています。以下は代表的な活用例です。

  • 画像認識:写真やビデオの中から物体や顔を認識する技術。Googleの画像検索やスマートフォンの顔認識機能に利用されています。
  • 音声認識:音声データをテキストに変換し、会話内容を解析する技術。SiriやGoogleアシスタントなどの音声アシスタントに応用されています。
  • 自然言語処理 (NLP):言語データを解析し、翻訳や文章生成、感情分析などを行う技術。翻訳サービスやチャットボットに利用されています。

ジェフリー・ヒントンの研究が深化させたニューラルネットワークは、AI技術の中でも特に重要な要素であり、現代の技術社会に大きな影響を与え続けています。

ニューラルネットワークの優位性

ヒントンの作り上げた「アレックスネット」は2012年に開かれた画像認識関連の大会で高得点をあげました。また同氏が率いるトロント大学のチームはゲーム関係の大会でも成果を収めています。「ヒントン氏が米エヌピディアの画像処理半導体(GPU)をつかった」実績が同半導体の評判を大きく広げました。2024年10月現在でエヌピディア社は過去最大の企業価値を持つ半導体メーカーとして君臨しています。(時価総額3兆ドル)

ジェフリー・ヒントン氏の功績はAI分野において非常に重要であり特に彼が提唱・開発した技術や成果は、画像認識やディープラーニングの飛躍的な進展をもたらしました。以下に、彼の代表的な実績を具体的に解説します。

アレックスネット (AlexNet) の成功

2012年、ジェフリー・ヒントン氏とその弟子であるアレックス・クリージェフスキー (Alex Krizhevsky) が開発した「アレックスネット」は、ILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)という画像認識の世界大会で圧倒的な成功を収めました。アレックスネットは従来のモデルを遥かに凌駕し、ディープラーニングの可能性を世界に示しました。

主な特徴と成果

  • 深層ニューラルネットワークの使用:アレックス・ネットは、8層に渡る深層ニューラルネットワークを用いて画像を処理しました。
  • エラー率の大幅な削減:アレックスネットは、他のチームが達成したエラー率を大幅に下回り、画像認識の分野で革新をもたらしました。
  • ディープラーニングの普及:この成功により、ディープラーニングが多くのAIプロジェクトで主流となり、その後の技術発展に貢献しました。

トロント大学のゲーム大会での成果

ヒントン氏が進化させた原理は、ゲームにおけるAIの活用でも優れた成果を出しました。特に、強化学習やニューラルネットワークの技術を駆使し、ゲームのプレイにおいて人間以上のパフォーマンスを発揮することに成功しました。

主な成果

  • 強化学習の応用:AIエージェントがゲーム内での行動を学習し、最適な行動を取るための強化学習アルゴリズムを発展させました。
  • AIのパフォーマンス向上:人間のプレイヤーを超えるAIを開発し、ゲームやシミュレーションの分野でもAIが強力なツールとなることを証明しました。

    • AIが人間を超えるプレイ:強化学習を用いたAIを開発し、ゲームにおいて最適なプレイを学習させました。これにより、AIが人間のプレイヤーよりも効率よくゲームを進められることが証明されました。
    • ゲームAIの進化:特に、戦略ゲームやリアルタイムのゲームにおいてAIが優れた成果を収め、AIの応用範囲が広がりました。これにより、ゲーム業界でもAIが注目され、エンターテインメント分野での利用が進んでいます。

    この実績により、ゲームやシミュレーション分野でAIの活用が急速に進み、技術の進化だけでなく、商業的な成功にもつながりました。

NVIDIAのGPUを用いた功績

ヒントン氏は、AI研究において米エヌビディア (NVIDIA) 社のGPU(画像処理半導体)を使用することで、ディープラーニングの計算効率を劇的に向上させました。これにより、従来のCPUでは処理が困難だった大量のデータを短時間で処理できるようになり、AI技術の急速な発展を支えました。

主な成果

  • 計算速度の飛躍的な向上:GPUの並列処理能力を活用し、ディープラーニングの訓練時間が大幅に短縮されました。
  • NVIDIAの評判を高める:ヒントン氏の成功により、NVIDIAのGPUはAI研究の中核ツールとしての地位を確立し、2024年時点で同社は時価総額3兆ドルに達するなど、過去最大の企業価値を持つ半導体メーカーとなりました。

2024年10月現在の影響

ヒントン氏のこれらの実績は、AI研究と商用化の両面で大きな影響を与え続けています。彼が発展させた技術や使用したツール(特にNVIDIAのGPU)は、現在でもAIの進化を支える基盤として機能しており、AI産業全体の成長を促進しています。

今後の物理学とAI

物理学における知識の追求は、AIの登場で新しい段階に入ったという印象を受けます。第一回のレントゲンの受賞の時代からはより実験と結びついた実証的な現象理解が次々と進んでいきました。量子力学、素粒子物理学、物性物理学といった新世界で人類は知見を広めてきました。そうした現象理解はこれからも続きます。同時に、現代における革命的な技術である「AI」が急激な変化をもたらして、恩恵を与えていることも確かです。その意味で2024年の受賞は時代を反映していると言えます。「二人が貢献したAIの技術革新と発展は、他の物理学の大きな推進力となっている」とノーベル賞の選考委員会は称えています。具体的には以下の事例を評価してます。

具体的に解説します。

ヒッグス粒子の発見

ヒッグス粒子の発見は、2012年にCERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を使用して実現しました。この粒子は、1964年にピーター・ヒッグスらによって予測されたもので、物質の質量の起源を説明する重要な要素です。

  • 役割と意義:ヒッグス粒子は「ヒッグス場」という見えないフィールドと関係しており、これが他の素粒子に質量を与える役割を果たします。質量の存在理由を解き明かすことで、標準模型と呼ばれる物理学の基本理論を補完しました。
  • 発見の重要性:この発見により、物理学者たちは物質の基本的な性質を理解するための手掛かりを得、宇宙の成り立ちに関するさらなる研究が進展しました。

重力波の検出

2015年、アメリカのLIGO(レーザー干渉計重力波観測装置)は、重力波の直接検出に成功しました。重力波は、アインシュタインの一般相対性理論で予言された時空の歪みを示す波で、ブラックホールや中性子星が衝突したときに発生します。

  • 役割と意義:重力波は、宇宙の深遠な出来事を探知する新しい手段を提供しました。これまで光や電磁波では捉えられなかった現象を観測できるようになり、宇宙の起源やブラックホールの性質に関する新たな洞察が得られるようになりました。
  • 発見の重要性:重力波の検出は、天文学や宇宙物理学に革命をもたらし、これまで理解されていなかった天体現象の解明が進むきっかけとなりました。

ブラックホール観測

2019年、Event Horizon Telescope(EHT)によって史上初めてブラックホールの「写真」が撮影されました。この画像は、地球サイズの望遠鏡を使ってブラックホールの影を直接観測したものです。

  • 役割と意義:ブラックホールは、光さえも脱出できない強い重力を持つ天体で、その存在は理論的に予測されていましたが、実際に観測されたのは初めてです。これにより、ブラックホールが実在し、一般相対性理論が正しいことが改めて確認されました。
  • 発見の重要性:この観測は、宇宙の極限状態に関する理解を深め、ブラックホールが周囲の物質やエネルギーとどのように相互作用するかを知る手がかりを提供しました。

これらの成果は、AI技術の進歩によるデータ解析やシミュレーション技術の向上があったからこそ可能になった部分も大きく、物理学とAIの相互作用が未来の科学研究を大きく推進する役割を果たしています。

 

4o

ノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベルの当初の理念(遺言)
を最後に残します。「(ノーベル賞は)
人類にもっとも大きく貢献した科学者に贈る。

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日本での量子コンピューターの実現へ向け新会社設立【分子研が中心‗冷却原子方式採用】

次世代の高速計算機を商用化へ

国内のメーカーと国の研究機関が2024年度に新会社を立ち上げます。新会社が成功するためには、大事な事が思い浮かびますね。

まず、産業連携と協力:

他の企業や研究機関との連携が重要です。共同研究やパートナーシップを通じて、幅広い視点からの知見を取り入れること大事です。

そして、市場調査と需要予測:

顧客のニーズを正確に把握し、市場調査を行い、将来の需要を予測することが重要です。これにより、製品やサービスの開発において競争力を維持できます。

最後に、人材の確保と育成:

高度な技術を持った人材を確保し、彼らのスキルを磨くための継続的な教育プログラムを提供することが成功の鍵となります。アイディア出しの段階とは別に産業塾生の為に大事な時期があると考え、産業成長の為に尽力する人員が必要です。

日本の特技とプレーヤー

会社としてプレーヤーとして名乗りを上げているのは富士通、日立製作所、NEC、浜松フォトニクス、スタートアップのblueqatやグルーヴノーツが参加する予定です。

国の研究機関としては自然科学研究機構・分子科学研究所(分子研・愛知県岡崎市)が中心となり新会社を設立する模様です。こうした事業で想定される予算の流れを考えると出資比率に伴い、国から各社に補助金がつく形となる事でしょう。詳細は今後決めていくようです。また他機関としての日本投資銀行も参画します。

超伝導方式と冷却原子方式

今回の量子素子(従来コンピューターでのビットに相当)を実現する
ハードウェアは「冷却原子方式」と呼ばれる新しいタイプです。

理化学研や米IBMが超伝導方式(今のスタンダード)を採用
しているのに対して、新団体の方式は絶対零度近くに冷やした
ルビジウム電子を使います。

「原子1個1個を高精度で捕捉できる「光ピンセット」と呼ぶ技術の発達」

を使っている所がポイントです。
従来方式より技術的なメリットが出てきます。

夫々の方式で計算時のエラー対策や素子の集積化など課題
はありますが冷却原子方式の方が超伝導方式に比べて
素子の安定性が高く集積化にも有利ではないかと言われています。

【分子科学研・大森氏のコメント】

開発の課題

全体的な目論みとしては日本独自の将来の国際競争力を確保する目論見
がありそうです。2024年2月の時点での大きな進展として、新方式での
計算原理で大事になってくる「操作」に関わる時間を大幅に短縮しました。
分子研の大森賢治教授らが独自のレーザー技術で基本操作を10ナノ秒以下の
短時間で実現しています。
(原理的には2022年に英国の雑誌に発表しています)

また、
競合としてハーバード大学とその関係者(クエラ・コンピューティング)
が居て日米での競争となっています。

最後に
著者は急速に発展する量子コンピューターと
AIの技術進展が同時期に起きている事情に鑑み
この二者が関連しているのではないかという視点
を込めて今後の考察を進めていきます。
「何となく」
って感覚も大事ですよね。

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物質同士が真空で引き合う?!【狭い空間でのカシミール効果とその検証】

カシミール効果の検証

先ず本稿は2024年1月7日の記事からの情報で起草しています。
近接した2つの物体が量子力学的な効果で引き合うという現象です。

電磁力でもなく万有引力でもない力でマクロなスケールの物体が
引かれ合う現象は不可思議だと言えますが、
まさに量子的な効果だと言えます。

蘭ヘンドリク・カシミール

そもそも、こうした現象は理論的に予言されていました!!オランダのヘンドリックカシミールが真空中で生じると1948年に予想していたのです。

量子力学的に考えて、板の内側の狭い空間(数十nm)での真空状態を考えた時に板の内側での波動関数が外側と異なる筈なのです。結果として板同士が引き合う力が生じます。板の内側の波動関数の方が外側よりも秩序を持っているからだとも言えますね。
エネルギーに相当する振動(波)を観測する作業となります。

ゆらぎの効果と制御

カシミール効果の検証は困難でしたが技術の進展に伴い、
最近観測されるようになりました。
1997年に実験で確かめられています。
参考:京都大学での測定

産業ではトヨタ中研でロードベアリングでの応用
を考えているそうです。またMEMS(超微小電気機械システム)
への応用が検討されています。江崎ダイオードを実用化したように
独自の技術が期待できますね。

名大での2012年の実験

そもそも「ゆらぎの」現象が顕著となる設定は
不確定性原理を十分に考察する必要があります。

その不確定性原理を覆す観測が
2012年に名古屋大学で報告されています。

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AIでの考察(参考‗以下8行)
【量子力学において、物体が近接している状況では、電磁力や重力といった古典的な力だけでなく、】
【量子効果によっても相互作用が起こります。これは「量子力学的な引力」と呼ばれることがあります。】
【具体的な例としては、カスミール効果が挙げられます。これは、2つの平行な平板が非常に近接していると、】
【真空中における零点振動により、これらの平板が引き合う現象です。カスミール効果は量子場論の一部であり、】
【真空中の量子フラクトゥエーションによって引き起こされるものです。】
【このような量子的な引力効果は、通常の重力や電磁気力とは異なる特性を持ち、微小な距離や】
【微小なスケールでの相互作用に関与します。これは古典的な物理学の範疇を超えるものであり、】
【近年ではナノテクノロジーや微小な物体の挙動の理解において重要な要素となっています。】

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あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。【本ブログの方向性】

年が明けて目出たいですね。

皆様あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。

個人的には昨年度は色々と新しいことがありましたが、なにより

AIとの出会いがとても意義深かったです。

これからもAIを中心にネット活動を続け、理想を具現化します。

本ブログの今後(方向性)

なにより本ブログは私のネット生活のきっかけとなったブログで

これからも大事にしていきたいと考えています。

少なくとも、年に7人程度の物理学者(数学者)をとりあげて

主にリライトをしながら個別記事を洗練・充実させていく

方向で今後も続けていきたいと思います。

どうぞ宜しくお願い致します。

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2024/01/01_初版投稿
2024/09/28改訂投稿

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